「英語を」教えるではなく、「英語で」教える
私立小学校と言えば、学校法人で運営されるのが普通ですが、株式会社で運営されている小学校が全国に2校だけあります。
その中の1校が、神奈川県相模原市にあるLCA国際小学校です。
株式会社エデューレエルシーエーが運営するこの小学校は、特区制度によって文科省が認可する正式な小学校です。
LCA国際小学校の特徴は、国際小学校の名の通り英語教育。
英語を教えるのは当たり前のこと、幼稚園から3年生までの国語以外の教科は、全てネイティブの講師が「英語で」教えています。
認可小学校ですから、教科書は認定教科書。
これを手作りで英訳して教える徹底ぶり。
所謂、インターナショナルスクールと違い、義務教育を受けさせた親の法的責任は果たせるとともに、日本を学ぶ国語や社会科にも力を入れています。学園長でもある山口社長。「日本人としてのアイデンティティを持って世界に日本を発信できる真の国際人を育てることが目標」と教育理念を熱く語っています。
保護者の皆さんが最大・最強のファン
授業に英語を取り入れて、英語を普段使いできるようにする教育。
英語イマージョン教育と呼ばれています。
その効果は絶大です。
私が初めて、LCA小学校を訪問した時のことです。
算数の授業中に先生に、どんどん英語で質問をする子供たち。
そればかりか、休み時間にも、子供たちの中で英語が飛び交います。
この様子を見れば、是非、わが子をこの学校へと思う親が多いことは、容易に想像がつきます。
熱烈なファンとなった親は、この学校のサポーターでもあります。
学校法人の小学校では当たり前の、補助金交付や税金の免除がない株式会社のLCA小学校ですが、株式会社故のメリットは、株主を募集できることです。
そこで白羽の矢が立ったのがGoAngelでした。
ファンが株主として応援するFamily & Friends型募集を方針とするGoAngel。募集対象は主に児童の保護者の皆さんです。
株主が増えるのは避けるべきこと?
2017年9月13日にGoAngelに登録されたエデューレエルシーエー。
600人の保護者に向けて、GoAngelの審査通過と、株主を募集する旨のメッセージを発信しました。株式投資型クラウドファンディングでは、一人当たりの投資上限は50万円と制限されています。エデューレエルシーエーでは、目標募集額を2,000万円、1口の金額は50万円に設定しました。
募集期間は、2ヶ月弱。見事に2,000万円の目標募集額を達成しました。
株主として出資いただいた方の多くは、言うまでもなく、保護者の皆さんです。
同社は2018年2月には、1口の金額を10万円に引き下げて、2回目の募集を行い、合わせて2,700万円の資本調達に成功したのです。
GoAngelでの資金調達の結果、株主数は60名を超えました。
日本では、どうも株主が増えることを嫌う傾向がありますが、世界ではむしろその反対。
株主は事業パートナーでありサポーターというのが本来の株式会社の株主の姿です。
荒れた総会や、株主管理の手間やコスト、クレーマーとなった株主の話ばかりを聞いているために、株主が増えることを嫌がのるかもしれません。
しかし、それは、金銭的リターンのみを追求する「冷たい投資」の株主を集めてしまった会社の話。
株主が経営者の思いに共感し、経営者はその株主の負託に応えるべく、自らの思いを実現するために誠実に経営に当たる限り、株主は経営者の強い味方であり続けていただけるのです。
株主総会は年に1度の株主のお祭り
3月決算のエデューレエルシーエーの定時株主総会が開催されたのは6月27日。
20名ほどの株主が出席された株主総会で、山口社長は、改めて教育方針を示すとともに、LCA教育現場の実状や今後の計画を報告。株主の質問は活発です。それも中学校の設置の方針等、未来に向けてさらに学校を発展させるための前向きな内容ばかり。
総会後には、オペラ歌手も登場して社長夫妻がダンスを披露。
歌あり踊りありの楽しい株主懇親会です。
米国で最も尊敬されている投資家で経営者の一人であるウォーレンバフェット。
同氏が率いるバークシャー・ハサウェイの株主総会は10時間にも及ぶロングラン総会で有名です。
決して荒れているから長いのではありません。
バフェット氏いわく、株主総会は年に1度、株主に感謝する株主のためのイベント。
株主のお祭りなのです。
世界中から集まっていただける株主に、よく会社のことをわかっていただいた上に、十分に楽しんで満足して帰っていただきたい。
そんなバークシャー・ハサウェイの株主総会を彷彿とさせるエデューレエルシーエーの株主総会でした。
(つづく)
DAN ベンチャーキャピタル 株式会社
代表取締役 出縄 良人(公認会計士)
(プロフィール)