ディー・ブレイン証券の代表を退任する1ヶ月前の2010年9月末。
一斉同報メールでこれまでお付き合いのあった皆さんにメッセージを送りました。
すると200通を超えるメッセージの返信。その殆どが激励のメールです。
1997年の設立から13年。拡大縁故募集を標榜し、「暖かい資金」を身近なファンから集めるコンセプト。
20万社の中小企業にエクイティ資金を供給する!
その思いに共感して、ディー・ブレイン証券を支えてくれた株主は1,500名にまで広がっていました。
それから5年を経て、その思い再びと、立ち上げたのがDANベンチャーキャピタルです。
DAN=「暖(だん)」。
「共感」と「参加」をコンセプトとするクラウドファンディングは、まさに「暖かい資金」であることが特徴です。
対極にあるのは、金銭的利益のみを追求する「冷たい資金」であることは言うまでもありません。
米国ではFamily & Friends Financeと呼ばれている拡大縁故募集。
2013年のデータでは、Family & Friends Financeの市場規模は全米で年間600億ドル※1(約6兆6千億円)。当時リーマンショック後の回復期にあったVC投資が年間220億ドル(2兆4千億円)、個人富裕層からのエンジェル投資が200億ドル(2兆2千億円)であったことから、これらを凌駕する巨大なマーケットです。
起業後、FFFにより資金調達をしている米国企業は38%※2。信用力が十分ではない、中小企業の有力な資金調達の手段となっています。
実は、米国では株式型クラウドファンディングが、Family & Friends Financeの市場を拡大させると指摘されています。SNSでFriendsが大きく広がっていることが背景です。
米国では、2012年にJOBS法(Jumpstart Our Business Startups Act.)が議会を通過します。
7章により構成されるこの法律の第3章のタイトルはすばりCROWDFUNDING。
米国ではNYSEやNASDAQに上場しない限り、証券法の厳しい規制で、株式の一般募集(公募)は困難でした。
それが、この法律によって、Funding Portalと呼ばれる専業登録業者を通じて、年収に応じた一定の範囲内であれば、 インターネットを通じて一般個人を対象に非上場会社が株式を募集できるようになったのです。
日本で2014年の金融商品取引法改正で制度化された株式投資型クラウドファンディングは、この米国JOBS法を参考にしています。
JOBS法第3章が実際に施行されるまでには、かなり時間がかかりました。
米国SEC(証券取引委員会)が、Regulation Crowdfunding を完全施行したのは2016年4月。しかし、その後の動きは速く、一気に10社を超えるFunding Portalが立ち上がり、市場は急速に拡大しています。
2015年5月に先行して改正金商法が施行されたにも関わらず、未だにDANベンチャーキャピタルを含めて3社の業者しか登録が進んでいない日本とは大違いです。
今のところ、日本でFamily & Friends Financeを、株式型クラウドファンディングで広げているのは、登録業者3社の中でDANベンチャーキャピタルだけ。
しかし、大和総研がレポート※3で分析しているとおり、マーケットのポテンシャルを考えれば、Family & Friends Financeが株式型クラウドファンディングにおいて主流となっていくことは間違いないでしょう。
次回は、DANベンチャーキャピタルが運営する株式投資型クラウドファンディングGoAngel(ゴ―エンジェル)での、拡大縁故募集すなわちFamily & Friends Finance実際例を紹介して参ります。
(つづく)
※1、※2 “Type of Investors” by Fundable
※3 『株式投資型クラウドファンディングの効能』2018年5月16日 大和総研・金融調査部 主任研究員 土屋貴裕
DAN ベンチャーキャピタル 株式会社
代表取締役 出縄 良人(公認会計士)
(プロフィール)